エンバルembalはキャッサバ芋を原料にして作られた食品で、インドネシアマルク地方東南にあるケイ・クチル島(トゥアル)で伝統的に食べられてきた主食の一つです。
キャッサバ芋を粉にしたものに水を加えて練った生地を発酵させてから焼いた物で、シルシルsir-sirと呼ばれるキャッサバの葉っぱの炒め物やパパイヤをおかずにして食べられています。(焼かずに粉状の物に唐辛子や塩と混ぜ、主食としても食べます。)
水分が抜けることで非常に固く、瓦煎餅のような食感であるため、お茶やスープ類に浸すとほろりと崩れて食べやすい。
噛み応えが有り、腹持ちが良く、日持ちがするところが南国の主食にぴったりな感じです。
かつては主食だった芋の加工品。今はお菓子にもアレンジ。
マルク州では伝統的にサゴ椰子デンプンのお粥やゆで芋を主食としていました。
主食の芋の中でもキャッサバ芋には毒性があるため、食べる前に毒抜きをする必要があります。毒抜きして食べる工夫です。
また、加工を経ることで日持ちするようになるのもエンバルの魅力の一つ。
生鮮市場ではヨーグルトの様な発酵臭を放つ白い塊が並んでいて、「チーズが売っているのかな?」と近づいたら、加工前のエンバル。
今や家庭で作らずとも市場で加工済みの食品が買えます。
遠目に見ると山羊のチーズの塊っぽく見えたエンバルも、近づくと石灰の塊のようで、一体なんだかわからない。
売り場のおじさんに「ダリ・シンコンだ!」と言われて初めて、「あー、キャッサバか~」腑に落ちたくらいです。
ちょうど近くでエンバルで食事をしていたおばさんがいて、食べ方を教えてくれました。
おばさんは干し魚をおかずにして、唐辛子と一緒に食べてました。
乾物屋さんには型で焼かれたエンバルがずらりと並んでいます。
こちらは携帯性に優れていて、生の物よりも食べやすいです。
また、エンバルは主食以外にも加工材料やおやつにもなります。
絶品なのは、エンバルを衣に使った揚げ物です。
ピーサン・ゴレンやアヤム・ゴレンもこの島ではエンバルを使います。
これが噛み応えのあるザクザクと音を立てる衣に仕上がって、小麦粉やパン粉とはまた違った食感が、マッチして美味しいのです。
お煎餅系では、砂糖やナッツを混ぜて焼いた物は素朴な甘さ。
少し湿気たくらいが食べやすく、噛みしめると芋の味がじわりとして、後味が鹿児島のかるかんみたい。(かるかんは山芋を使う。)
左の写真はプレーンタイプのエンバルです。
一見ワッフルか何かの様に見えますが、ワッフル型に入れて固めることで乾かしやすいからだと思われます。
ワッフル型でハートにしたり、植木鉢のような形状にしたりして薄くのばして早く乾かす工夫がされている。
このまま食べるわけではないので、形はかわいい方が売れるのかも?
味のついていないプレーンタイプに対し、そのままおやつとして食べられる加工品もあります。それが冒頭の写真のナッツ入り、黄色や茶色のエンバルです。
おやつバージョンで人気なのがチョコレートとチーズ味。エンバルにチーズ、チョコレートをコーティングしてあり、ほんのりと優しい味だったエンバルにはっきりとした味が加わり、食べやすくなります。
個人的には3種類の中ではチーズが一番美味しかったと思う。
ただし、お菓子としては「惜しい!」という感じの微妙な味で、たぶん主食として食べるのが最も美味しいのではないかと思う。
しょっぱいおかずを乗せながらバリバリと食べたかったですね。
とっても固い(おせんべいなんかよりずっと堅い)のと芋の後味にチョコやチーズという組み合わせが不思議な風味で、お菓子としては好き嫌いは分かれると思われます。
西洋料理の原料のココアやチーズより、米粉、豆と組み合わせて
和テイストに仕上げた方がしっくり来る気がするなぁ。
町にはローカル料理を食べさせてくれる食堂はあまりありませんので、エンバルを食堂で食べるのはかなり難しいと思います。
なので、食べたければ宿のお母さんに作ってもらって食べることをおすすめします。
そのまま主食として食べるより、この粉を衣に使った揚げ物がうまいです。
これは本当にオススメです。
あまりにピーサンゴレンをうまそうに食べてたので、宿のお母ちゃんが気を利かせて毎朝つくってくれてたくらいです。
小麦粉を衣にするより美味しかったですよ~。