韓国では食肉として、牛、豚、鶏だけでなく鴨も割と一般的です。鴨肉は油が多かったり、臭みが合ったりと独特の癖がありますが、飼育の時、餌に硫黄やビタミン等を混ぜることで癖を無くし、栄養をアップしたのが硫黄鴨ユファンオリ유황오리です。
薫製(フンジェ훈제)にして前菜に食べる他、焼き肉や鍋の具材として使われるのが一般的。
その薫製鴨を温かく食べようと考案されたのがこの料理で、名称は日本料理のしゃぶしゃぶから由来されると推察されます。
美味しい鴨を蒸しながらしゃぶしゃぶにする。
韓国では、昔から硫黄は「陽」の塊、鴨は「陰」の塊と言われ、硫黄を餌に育った鴨は「陰」と「陽」※が中和されたバランスのよい食べ物とされてきました。
健康な人はもちろん、陰と陽のバランスが崩れ体調をくずした人にも最適な食べ物ということです。
日本でも大ヒットした韓国ドラマ「チャングムの誓い」では、体の調子の悪い王様に硫黄アヒルを食べさせたエピソードがありました。
鴨は毒性の強い硫黄を食べても死なない生命力を持ちます。
だからこそ珍重された健康食だったのでしょう。
こういう背景を知ってから食べると、「あ、そゆことか」って目から鱗です。
※万物は木・火・土・金・水の5つの要素=五行と、陰・陽からなる陰陽五行という東洋思想に基づき、食べ物をバランスよく食べることで健康を保てるとされる韓国の食事法。
さて、硫黄鴨の薫製のしゃぶしゃぶと言うことですが、
硫黄鴨を最後まで温かく食べるために考案されたメニューです。
鴨の骨でとったスープを鍋に張り、温めた後、大量のニラを湯がく。
そのまま鍋にするならしゃぶしゃぶとは言いません。さっと茹でたニラ、別皿で準備された鴨を網に乗せ、鍋の上にセット!鍋からもうもうとあがる湯気で蒸しながら食べるのです。
鴨肉は何もつけなくても食べられるくらいほどよい塩分がありますが、ニラと共にニンニクベースの甘酸っぱいたれがバランスがよい。
蒸気と一緒に肉の脂やニラのうまみがしたたり落ちたとしても、落ちたその先は鍋の中です。まったくもって抜かりはないのです。
肉や野菜を平らげた後、鍋の中にはうどんを投入。コチュジャンで味を調えて、鴨と野菜のエキスを吸い込んだうどんで締め。
ニラの調理法はしゃぶしゃぶともいえますが、単に「鍋」という方が近い様な不思議な料理ですが、唐辛子などがあまり使われておらず、辛い物が苦手な人でも充分楽しめる味です。
柔らかくてジューシーな鴨肉をさっぱりと。
日本では余り食べられない食材なので、韓国滞在中にチャレンジするのがオススメです。
南門土房ナンムントバン(旧トバンチュオタン)
ソウル市 中区 会賢洞1街 202-3 tel: 02-778-6727
10:00~23:00(ラストオーダー22:00)
地下鉄4号線会賢(フェヒョン)駅下車。
南大門市場の端、新世界(シンセゲ)百貨店の裏手にあり、繁華街明洞(ミョンドン)からも徒歩圏内なので観光客にも便利。
地元民で一杯ですが、メニューは写真付きなので注文は楽です。
一人旅には向きませんが、2、3人集まったら是非。(注:看板は旧店舗の物です。)